新刊

原典復刊 ほうれんそうが会社を強くする ー報告・連絡・相談の経営学ー

バブル禍、中堅企業社主が経営理念とした「原典」を今一度お読みください。

著者 山崎 富治
ジャンル ビジネス
シリーズ 仕事術
出版年月日 2024/08/29
ISBN 9784341088668
判型・ページ数 4-6・222ページ
定価 本体1,300円+税

まえがき

 先日、ある会社の新社長が来社され、「私の社長第一声は、これからポパイになるよ、ということでした」という話をされた。そのお話によると、これを聞いた社員は最初キョトンとしていたが、報告・連絡・相談の経営論をぶってから、「みなさんが新しくておいしい“ほうれんそう”をどんどん食べさせてくれたら、ポパイ社長はモリモリ元気になりますよ」と続けるとワッと湧いたという。「おかげで社内が明るくなり、活気が出てきたようです」と、わざわざ元祖“ほうれんそう経営”の私のところへ、挨拶に来てくださったというわけだ。

 私はこれを聞いて、なんとうまい“ほうれんそう”の活用を思いついたものだ、まいったな、と感心するとともに、私のまいた“ほうれんそう”の種が、意外に広く青青と伸びていることに大きな喜びを覚え、ますます意を強くした。組織の動脈硬化を防ぎ、活性化させるには、報告・連絡・相談の、“ほうれんそう”を徹底させることがだいじだということから、全社員に野菜のホウレン草を配る“ほうれんそう運動”を私が始めたのは、昭和五十七年の三月だった。この“ほうれんそう運動”は、各方面から大きな注目を浴びた。どうやら、組織のタテ・ヨコのコミュニケ-ションについては、頭を痛めているところが多いらしく、今では、あちこちで“ほうれんそう”が採り入れられているようだ。
 私が社長になって、今年で二十年になる。創業者であり父であった山崎種二は、同時に私のよき師でもあったが、父から会社を任されて以来、私が目指してきたのは、父を超える経営者ではなく、父とは持ち味のちがう経営者になることだった。相場の神様とまでいわれた父にくらべて、私にはそれほどの才能もない。だから、いかに多くの知恵を集め、社員の力を合わせるかが、経営者としての私のだいじなつとめでもあった。下からの意見をどう吸いあげるか、みんなが働きやすい環境をどう作るか、暖かい人間関係をどう作るか、少数精鋭で社員一人ひとりに厚く報いるには・・・と、つね日ごろ頭を悩ませていたとき思いついたのが、“ほうれんそう”だった。
 それ以前から、会社の経営理念を社員一人ひとりに理解してもらうために、毎年目標を作り、その目標を具体化するために、月ごとに新しい標語を掲げ、しつこいようだが、そのつどポスタ-も作って徹底するように心がけてきた。その標語も、長ったらしいむずかしいものは避けて、いつもわかりやすさを心がけた。「みんなでホウレンソウ」という標語も、いってみれば、ダジャレのようなものかも知れない。しかし、経営の目標や哲学といったものは、誰にでもわかる言葉で語らなければ理解されない。
 いろいろな試行錯誤を重ねながら、“ほうれんそう経営”にたどりつき、それをモットーに掲げるまで、十年近い時間を必要とした。これからも“ほうれんそう経営”を物心両面から徹底し、あと十年間はがんばって、明るく楽しい経営を進めていきたいものである。
 この“ほうれんそう”は、おひたしにしても、ごまあえやおすましにしても、また西洋風にバターいためにしても、それぞれにおいしい。どう育て、どう味わうか、それぞれの組織に合ったやり方があるはずだ。“ほうれんそう”の種をまき、育て、豊かな収穫を得るために、この本がすこしなりともお役に立てば“ほうれんそう元祖”として、これほどうれしいことはない。

昭和六十一年九月七日          山崎富治

 この本が、それこそ、「ごまん」と売れれば立派なもんだ、などと冗談を言っていたが、三年間でなんと、「ごまん」がその三倍、十五万部二十六版も売り切ってしまったのだから、われながら驚いた。台湾では、私のまったく知らないうちに『菠菜型經營管理』 (報告・連繫・討論的經營學)として中国語訳された海賊版がベストセラーにはいっていると聞き、ほんとうにびっくりしたのである。(平成元年九月)

平成元年九月              山崎富治

 ◆著者略歴

山崎 富治(やまざき とみじ)
1925年東京生まれ。旧制東京商科大学(現一橋大学)卒、シティーバンク東京支店に入行。一年後から兜町入り、父・種二との親子経営で業績を伸ばす。
山種証券社長、会長、日本青年会議所会頭、東京証券業協会副会長などを歴任する。日本画専門の美術館として知られる山種美術館の館長としても活躍する。2014年没。


原典復刊にあたり       ごま書房新社編集部

 本書の原題は、『ほうれんそうが会社を強くする—報告・連絡・相談の経営学』。
 著者は当時の山種証券の社長であった山崎富治氏。一般には、山崎社長が社内キャンペーンとしてで始めたことが話題となり出版化された。
 本書の「まえがき」にも書かれているように、相場の神様といわれた創業者の二代目となつた著者の「私にはそれほど才能もない。だから、いかに多くの知恵を集め、社員の力を合わせるかが、経営者としての私のだいじなつとめであった」という思いが“ほうれんそう”であった。実際に、全社員にホウレン草を配り、その経営理念を理解してもらう活動を続けた。この「報告・連絡・相談」の主旨は、その後出版された多くの著書によって「組織に不可欠な、上司の状況判断に必要な部下からの自発的な情報伝達」 の手段として次々と出版化された。(書籍は巻末に掲載)

 しかし提唱者である山崎氏は、「管理職が嫌な情報や好ましくないデータの公表を避けず、その問題点を積極的に全社的に改善していくこと」「社員や関係者であっても容易に報告、連絡、相談が行える風通しの良い組織・職場をつくるための手段として、<報連相>を勧めていること」「部下の努力目標ではない」と述べている。
 原典である著書が刊行されたのが、1986年、昭和61年9月。同年12月から1991 年、平成3年までの51か月間に、日本で起きた土地価格の上昇とそれにより好景気現象はいわゆる「バブル経済」や「昭和バブル」と呼ばれた。株式や不動産の高騰で、「日経平均株価が史上最高値を記録」「山の手線内側の土地価格でアメリカ全土が買える」と、テレビを中心にマスメディアが連日のように報道した。そのため、日本中で、多くの国民が好景気で浮かれている様子は記録され、記憶にある。
 初版発行から40年を経た令和の今、あのバブルの時代が再現され、「格差社会」から一層貧富の差が拡大し、まさに「階級社会」に変貌しつつある。
 さらに憂うべきは、「自分を支配階層」と考え違いをしている「ネコババ政治家」、「パワハラ首長」、「倫理亡き経営者」たちによる振る舞いである。
 40年を経た現在、著者であるこの中堅企業社長が、経営理念とした「ほうれんそう」を今一度、「上級民」はむろん、国民・公務員・従業員の「平民」の方々にもお読みいただきたい。これが「復刊」の趣旨である。最後に原典の『ほうれんそうが会社を強くする』に寄せられた、読者からの「レビュー」を紹介させていただく。
 「社会で生きていると報連相を強要される。原典を読んでみました。それは従業員の努力義務などではなく、経営者の努力義務でした。それを都合の良いように曲解し、間違って使っている部長クラスや経営者の何と多いことでしょう。報連相とは、「部下がにぎりつぶしたり誤魔化したりせず、ちゃんとした報連相ができるような会社の体制をつくりましょう」という意味でした。(中略)大事なことを言わない報告なんてのはよくある話。それはつまり、経営者のせいであるので、なくしていきましよう、という実践例でした。現代に応用して従業員が生きやすい会社がたくさん増えると良いですね」
「当初の思想はこんな感じだったんですね。ユーモア満載で楽しく読ませてもらいました」

第1章 “ほうれんそう”は、組織活性化の最良の栄養源

私は風呂場で“ほうれんそう”の種を拾った
“ほうれんそう”は、組織にいきいきとした血を通わせる
会社の“ほうれんそう”に必要な光、水、肥料とは
“ほうれんそう”は、“賛成”土壌には育たない
“ほう”が欠けると“れんそう” (連想)ばかりで勝手に思い込む
“ほうれんそう”も、かけ声だけで終わっては意味がない
スローガンも心に物が乗って「惣」てになる
“ほうれんそう”の種から生まれた予想外の産物
よその“ほうれんそう”が、こちらの“ほうれんそう”も育てる
“ほうれんそう”のゴマあえまで登場

第2章 “ほうれんそう”はこうすれば立派に育つ

“ほうれんそう”に巣食った“情性”を退治するための“大根”
“ほうれんそう”は小豆に手入れすれば、丈夫に育つ
私の半生は、父親との腕相撲だった
気のりしない仕事は病気のもと
“仕事、一番、楽しく、健康=シィタケ”
経営者も社員も、基本的な立場は同じ
“ほうれんそう”は、下からの水で成長する
ジュニア・マネ—ジャー制で、若い世代の参加意識が飛躍的に高まった
女性の不平・不満が、知らずに“ほうれんそう”を腐らせる
女性に、憲法違反で訴えられた苦い体験
レディース・マネ-ジャー制を考えたのはなぜか
組織の活性化に、女性の力は欠かせない
“ほうれんそう”は、組織にいきいきとした血を通わせる
時間をだいじにすれば、自然に“ほうれんそう”もだいじにするようになる
水戸黄門方式で、下の声をいかに吸い上げるか
序列・担当にこだわっていると“ほうれんそう”が枯れる
組織にカツを入れる“もう一つの刺激部隊”
職前・職後に“ほうれんそう”を

第3章 “ほうれんそう”を育てる栄養素

“ほうれんそう”を育てる栄養素 ⑴
—「士農工商」からの意識改革—
“ほうれんそう”を育てる栄養素 ⑵
—コミュニケーシヨンから“カミュニケ-シヨン”へ—
“ほうれんそう”を育てる栄養素 ⑶
—“採長補短”の原則が、人を生かす—
“ほうれんそう”を育てる栄養素 ⑷
—トップの“聴く耳”が、社員の口を開かせる—
“ほうれんそう”を育てる栄養素 ⑸
—組織にガツンと一 撃のショック療法—
“ほうれんそう”を育てる栄養素 ⑹
—現場主義で全体をつかむ—
“ほうれんそう”を育てる栄養素 ⑺
—いろいろなアシが会社の“足腰”を強くする—
“ほうれんそう”を育てる栄養素 ⑻
—人まねせず、見栄をはらない「腹八分経営」—

第4章 “ほうれんそう”を枯らす病原菌

“ほうれんそう”を枯らす病原菌 ⑴
—タテだけではボーッ(|)、ヨコだけではマイナス(-)—
“ほうれんそう”を枯らす病原菌 ⑵
—「くさいものにフタ」を閉じさせる独善・保身—
“ほうれんそう”を枯らす病原菌 ⑶
—「新」をバカにする経験主義—
“ほうれんそう”を枯らす病原菌 ⑷
— “アイウエオ”を忘れた家族病—
“ほうれんそう”を枯らす病原菌 ⑸
—「人きいことはいいことだ」という“大企業意識”—
“ほうれんそう”を枯らす病原菌 (6)
—「ダメだ、ダメだ」が、会社をダメにする—
“ほうれんそう”を枯らす病原菌 ⑺
—収穫を急ぎすぎる「せかせか病」—
“ほうれんそう”を枯らす病原菌 ⑻
—細かいところにまで口を出すトップの“コウ害”—

※本書は『ほうれんそうが会社を強くする』(一九八六年ごま書房刊) を再編集し復刊したものです。

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