テレビ通販で分かった　「売れる！」話し方

はじめに

　テレビの通販番組を見ていて、ついつい「ほしいなあ」「これ、良さげだなあ」と思ってしまった経験はないでしょうか。実際に電話をかけて買ってしまった、という経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。その日の朝までは、全然ほしいと思っていなかった商品を、ほんの数分でほしくてほしくてたまらない気持ちにしてしまうテレビ通販。画面には、有名人とか女優さんとか、モデルさんが映っているわけではなく、しゃべっているのは美形とまではいえない通販キャスタ－です。彼らのしゃべり一つで、思わず衝動買いしてしまうのはなぜなのでしょうか。
　実はそこには、計算し尽くされたある方程式があるのです。

　私は大手通販会社ジャパネットたかたで、テレビとラジオの通販キャスター(ジャパネットたかたでは「MC」といいます)を丸10年経験し、最前線で販売の仕事に携わってきました。ジャパネットたかたといえば、みなさんがまず思い浮かべるのはハイトーンの声が特徴の髙田明前社長ではないでしょうか。長崎県の小さなカメラ店からスタートし、わずか30年でジャパネットたかたを全国でも有数の通販会社に育て上げた創業者であり、常に画面に出て商品の魅力を伝え続けたカリスマ販売員でもあります。
　私は髙田明氏が、画面から引退する少し前の2013年にジャパネットたかたに入社し、すぐにMCとして画面に出て商品紹介を担当したのですが、今考えても情けないほどにまったく売れないMCでした。「自分には、この仕事は向いていないのでは？」 と思い始めていたあるとき、髙田明氏のしゃべり(セールストーク)をそっくりその ままコピーしてしゃべる「完コピ」で商品を紹介したところ、突然売れ始めたのです。髙田明氏のしゃべりには、商品を買いたくなる何かがありました。そこからの3年間 は、ひたすら髙田明氏の生のしゃべりを横で聴き、それを覚え、髙田明氏がしゃべった通りにしゃベって売る、という完コピセールストークの実践で時間が過ぎていきま した。

　ところが、その髙田明氏が65歳という若さで、突如、社長を引退。テレビ通販の表舞台からも姿を消すことを発表し、私も大きな衝撃を受けました。巷ではジャパネッ卜たかたは看板社長がいなくて大丈夫なのか、そんな声さえささやかれ始めていました。実際に同じ不安を抱えた制作現場のスタッフも多かったのです。

　私は髙田明氏が生んだ、商品を言葉に乗せて売る技術を何とか形にして残せないか、引退までの1年間で、お客様へのメッセージの伝え方を分析し、誰がしゃべっても売れる形にできないかと、手探りの日々が始まりました。
　そんな中で、ある取り組みが始まります。髙田流の話し方・伝え方を整理した上で 図式化し、誰が見ても、その通りにしゃべるだけで、お客様へメッセージがわかりやすく、伝わりやすいナビゲ－ションのようなものができないかというプロジェクトです。そして、みんなで知恵を絞る中で考案されたのが、「ポジションマップ」です。
　これは、メッセージの柱を明確にして、伝える訴求内容と順番、どんな言葉で買っていただくかを一枚のシートにまとめたもので、ジャパネットたかた内のテレビやラジオのほか、ィンタ－ネットもカタログもすベての媒体で同じポジションマップを使うことによって、ジャパネットたかたのメッセ－ジをブレることなくストレートに伝えることができる最強のアイテムとなりました。今回は、そのポジションマップを私なりに改定し、オリジナルの「商品ナビシ－卜」として、どなたでも使いやすい形でご紹介します。
　この商品ナビシートを活用することで、誰でもショッピングキャスターのように商品の魅力を伝えられます。販売不振に悩むすべての企業や小売店の販売員にとって、強い武器になると確信しています。
　また、SNSやライブ配信で商品を紹介している人にも、ぜひ、販売強化ツールの一つとして、この商品ナビシートをご活用いただき、売上アップにつなげていただきたいと思います。

馬場雄二

馬場雄二(ぱぱ・ゆうじ)

元ジャパネットたかたテレビ/ラジオMC(master of ceremonies)。
1966年鹿児島県生まれ。1989年九州大学法学部卒業と同時に(株)鹿児島放送にアナウンサーとして入社。報道部に配属され夕方のニュース番組『KKBスーパーJチャンネル』キャスターや報道デスクを歴任。その間、テレビ朝日系列『テレメンタリー』 を担当し全国ネットのドキュメンタリーでディレクターも数多く手掛けた。

2013年大手通販会社(株)ジャパネットたかたに転職。 テレビショッピングMCとして6年間、髙田明前社長の直接指導を受け、その後ラジオショッピングMCとして4年閒販売の第一線を経験した。その経験を元に2023年独立。自前のライプコマースチャンネルを立ち上げ全国の魅力的な商品を発掘し販売する活助をスタートさせた。

 

はじめに

第１章　挫折から学んだトップセ—ルスマンの売り方の基本

１　元テレビ局ニュ—スキャスタ—の挫折
２　完コピから見えてきた一筋の光
３　達人に学ぶセ—ルスト—クの基本
４　社長の引退宣言～そのしやべりを分解するところから始まった～
５　商品の説明では売れない～生活の変化を伝える～
６　DNAを継承するための模索から生まれたアイディア
コラム❶　布団専用のクリ—ナ—「レイコップ」はなぜ売れた？

第２章　商品ナビシ—卜は"売れる話し方"の道案内

１　新商品の電動シェ—バ－をどう売るか
２　商品ナビシ—卜で断捨離しながら整理する
３　誰に売るのか～夕—ゲットが大事～
４　どんなメッセ—ジで売るのか
５　一番伝えたい内容は最後にとっておく
６　上売価の段階で安いと思わせる
７　値引き・下取りで「安い！」となる仕掛け
８　商品ナビシ—卜をもとにしやべってみよぅ
コラム❷「ラジオボイスレコ—ダ—」はなぜ売れた？

第３章　商品ナビシ—卜を応用してみよう

１　商品特性を理解してから取り掛かる
２　ケーススタディー
簡単便利な電気圧力鍋(単発購入商品)を売りたい
コラム❸　スチ—厶アイロン「スチ—厶QJはなぜ売れた？

第４章　話し手のスキル向上のために

１　商品ナビシ—卜から卜—クに変換するスキル
２　わかりやすい説明のための接続詞のスキル
３　お客様との距離を近づける言葉のスキル
４　声の卜—ンを変えて心に残る話し方に
５　レジェンドが大事にする「間」
６　大切なのは「お客様蠢力」

第５章　もつと商品ナビシ—卜を活用していこう

ケ－ス❶
新ファション(単発購入商品)を売りたい
ケ－ス❷
地元の名水で作った地ビ—ル(反復購入商品)を売りたい
ケース❸
男性用基礎化粧品(反復購入商品)を売りたい
ケース❹
旅行企画(反復購入商品)を売りたい
ケース❺
オンラインヨガレッスン(定期購入商品)を売りたい
ケ－ス❻
高齢者の見守りサ—ビス(定期購入商品)を売りたい
７　商品ナビシ—卜でどんな商品でも売れる！

おわりに