日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!

描いたことが次々と実現していく驚愕の歴史

「このシ-ン、どこかで見たことがある!」それは往々にして水島新司が既に描いていた・・・リアルが先か?漫画が先か?

著者 オグマナオト
ジャンル 実用・趣味
シリーズ 趣味・娯楽
出版年月日 2022/05/02
ISBN 9784341088101
判型・ページ数 4-6・256ページ
定価 本体1,364円+税
<内容>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■「このシーン、どこかで見たことがある!」それは往々にして水島新司が既に描いていた… 
■ドカベン、あぶさん、野球狂の詩……リアルが先か? 漫画が先か?  [水島予言続々!]
■松井秀喜5敬遠の15年前に描かれていた「山田太郎5打席連続敬遠」
■全盛期を過ぎた渡辺久信・完全試合を描いた翌月、現実でノーヒットノーラン
■シーズン最終戦「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定談」を28年前に!?
■計画発表の7年前に描いていたドーム球場(札幌ドーム)
■81年『光の小次郎』で描いていたドラフト逆指名
■ドカベン』でいち早く描いていたビデオ判定 [完全調査]
■[年表]水島新司野球マンガと野球界53年の足跡 1970~2022
■[リスト]水島新司野球マンガ全33作品

<著者について>・・・・・・・・・・・・・・・・
オグマナオト
ライター・構成作家
1977年、福島県出身。スポーツにまつわる雑学や伝説を採集し、コラムや書籍として執筆。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』、サイト「スポーツナビ」を中心に、スポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。
テレビ朝日系「報道ステーション」スポーツコーナー』やニッポン放送『スポーツ伝説』など、テレビ・ラジオ・YouTubeのスポーツ番組にも構成作家として参加している。
主な著書に、『ざっくり甲子園100年100ネタ』(廣済堂出版)、『スポーツ伝説超百科』シリーズ(ポプラ社)、『甲子園スーパースター列伝』『甲子園レジェンドランキング』『がんばれ!ニッポンの星 オリンピックのスターたち』(以上、集英社)、『福島のおきて』(泰文堂)など。 構成した書籍に、『大人も知らない!? スポーツの実は…』(文響社)、『親子で学ぶ サッカー世界図鑑』『Leo the footballのしゃべくりサッカー部』シリーズ(以上、ELGOLAZO BOOKS)、『メディアシフト YouTubeが「テレビ」になる日』『エガちゃんねる革命』(以上、宝島社)など。


はじめに

水島野球マンガ50年以上の歴史、33作に膨大な数の「予言」を見つけて

 プ口野球や高校野球を追いかけていると、「このシーン、どこかで見た気が……」というデジャヴのような感覚を味わうことがある。それは往々にして、野球マンガの大家・水島新司が『ドカベン』『あぶさん』などの作品のなかで既に描いていた、という場合が多い。代表例が2012年8月13日、夏の甲子園2回戦、済々黌(熊本)vs鳴門(徳島)の一戦で起きた、通称「ルールブックの盲点の1点」、別名「ドカベンルール」と呼ばれる現象だ。この日、SNSでは「ドカベン」がトレンドワードになり、ネットニュースやスポーツ紙でも「甲子園でドカベン名場面が再現」といった見出しでいくつもの記事になり、大きな話題を集めた。

 プレ—の顛末はこうだ。1点をリ—ドしていた済々黌7回ウラの攻撃。追加点を狙う済々黌は1死一・三塁のチャンス。だが、2番打者の放った鋭い打球は鳴門のショートがダイビングキャッチ。さらに一塁に転送されて走者が戻れずダブルプレーに。鳴門がピンチを脱出した……はずだった。ところが、無得点でチェンジとなるはずが、スコアボードには 「1」の表示が灯ったのだ。実は、三塁走者も2番打者のライナ—で飛び出していて、一塁走者のアウトより早く本塁に到達。この場合、鳴門はボールを三塁に送って「第3アウトの置き換え」をアピールする必要があったのだ。

 鳴門ナインも観客も、テレビで見ていたファンの多くもなにが起きたのか瞬時にわからず、ポカンとするほかなかったこのプレ—。だが、済々黌の選手たちは「わかって実行し たプレー」だったことが試合後にあきらかになる。三塁走者がインタビューで《小学校のとき、このプレーとルールは『ドカベン』で読んで知っていた》《あまり打てない自分たちは頭を使って点を取る必要があり、『ドカベン』をもとに練習していた》と語ったからだ。 『ドカベン』でこのプレーが描かれたのは1978年。山田太郎、岩鬼正美らがいる明訓高校と、同じ神奈川県のライバル・白新高校との試合だ(コミックス35卷、文庫版では23卷に収録)。明訓が1死満塁のチャンスでスクイズを試みるも、これが小飛球となり、飛び出した一塁走者の山田が戻りきれずにアウトに。ただ、三塁走者の岩鬼が3アウトより前に本塁に到達。白新側が「第3アウトの置き換え」をしなかったため、明訓が好投手・不知火から貴重な1点をもぎとった……という場面だ。『ドカベン』が高校球児の教科書代わりとなり、まるで予言のようにそのプレーが再現されたのだ。

 折りしも2012年は、『ドカベン』連載開始40周年のメモリアルィヤーであり、シリーズ最終章『ドリームト—ナメント編』が始まった年。歴代水島作品のオールスターキャス卜が集結しての夢の戦い、と銘打たれたこともあって、当時の私はネット記事を中心に、 水島野球マンガの考察記事、レビュー記事を寄稿することが増えていた。そのため、この済々黌のプレーについても「なにかほかとは違う切り口で書けないか?」と依頼を受け、 【「ドカベンルール」で話題騒然甲子園、まだまだある水島新司の予言的展開】の見出しで記事を寄稿。水島野球マンガで描かれたプレーが実際に起きるケースは多いことをいくつかの事例で紹介し、その「予言」が実現した背景には、水島新司の深い野球洞察があるからだ、とまとめた。ありがたいことに、この記事はYahoo!ニユースにも転載されて大きな反響を呼び、これがきっかけとなってラジオ番組や雑誌などからも、「水島予言」を もっと紹介してほしい、といった依頼を何度も受けることとなった。

 本書はそんな「水島予言」をあらためて洗い出し、実際のプロ野球、高校野球の世界とどのようなリンクをしてきたか、どんな影響を与えてきたのかを考察する一冊だ。現実世界で起きた実際のプレーを時系列で紹介していき、水島作品のどの場面でそれが予言的に描かれたかを検証。さらにその創作背景も探っていく。

 ここでの「予言」とは、敬遠球を強引に打って「岩鬼正美のような悪球打ち」と話題になったり、アッパースイングをする打者に対して「坂田三吉の通天閣打法みたい」といった表現で紹介されたりすることではない。もっと試合展開の妙、数年に一度あるかないかの珍しい現象がそっくりそのまま、驚くほどの精度で水島作品が先に描写していた、というケースに絞っている。それでも、過去33作、50年以上の水島野球マンガの歴史を振り返った結果、膨大な数の「予言」を見つけることができた。

 また、予言とは別に、プロ野球や高校野球で生まれた伝説のプレーが後年、形を変えて水島作品で新たな物語として描かれ、人々の記憶を呼び起こすこともある。それらは、「時代とシンクロした水島マンガ」と題した項目としてまとめている。

 本書を制作中の2022年1月、「水島新司逝去」のニュ—スが流れ、プロ野球選手を含む多くの野球人が、幼少期に触れた水島作品の偉大さについて語っていた。なぜ、水島野球マンガがこれほどまでに多くの支持を集めたのか。日本野球の歴史的な流れとともに見ていくことで、その考察にもつながるはずだと考えている。

[はじめに]水島マンガ50年以上の歴史、33作に膨大な数の「予言」を見つけて

【完全クロニクル「水島予言」&「時代とのシンクロ」】
[前編]1970~1994 「野球マンガ本格始動」から「伝説の5打席連続敬遠」まで

【水島予言】1973 『ドカベン』明訓高校編へ。最強打者への道、始動

【現実世界】1974 金属バット解禁で高校野球も打高投低時代へ

●神奈川高校野球の隆盛を予見!? 神奈川を舞台にした『ドカベン』

【水島予言】1973 『あぶさん』連載開始。主人公は代打男

【現実世界】1975 高井保弘(阪急)代打ホームラン世界新記録達成

●1974年の“長嶋茂雄引退”と『男どアホウ甲子園』の結実

●月産450枚!?  水島新司の「最盛期」は1977年説

【水島予言】1979.8.17 ドカベン擁する優勝候補・明訓、まさかの敗退

【現実世界】1979.8.20  ドカベン擁する優勝候補・浪商、準決勝で散る

●現実になった『ドカベン』と『球道くん』。甲子園を席巻した香川伸行と中西清起

【水島予言】1973 東大野球部に入った剛腕・藤村甲子園 史上初のリーグ優勝

【現実世界】1981 東大野球部快進撃「初優勝か!?」で沸いた“赤門旋風”

●甲子園名物の“呑んべえ監督”名将ふたり 池田・蔦文也と明訓・徳川家康

●1983年、“代打男”景浦安武の戦力外と“浪速の春団治”阪神・川藤幸三の戦力外

【水島予言】1981『あぶさん』景浦安武 オールスターで江川9連続奪三振を阻止

【現実世界】1984 江川卓(巨人)オールスターで9連続奪三振ならず

【水島予言】1983.2~1987.7 水島オールスターが集結 『大甲子園』が描かれた“最強明訓”栄光の5年間

【現実世界】1983.4~1987.8 KKコンビ&立浪世代 5年間で4度優勝 “最強PL”が甲子園席巻

●桑田&清原、里中&山田 影響を受け合った“甲子園最強コンビ”

【水島予言】1981 『光の小次郎』連載開始 すでに描かれていた札幌ドーム

【現実世界】1988 東京ドーム完成 ドーム球場増加の先駆け的存在に

●南海からダイエーへ。球団身売りというとんでもない舞台装置

【水島予言】1969 『エースの条件』悲運の男・堂島剛 スイッチ投手への挑戦

【現実世界】1988 史上初の左右両投げ“スイッチ投手”近田豊年が南海入団

【水島予言】1981 『光の小次郎』新田小次郎 1位指名も入団拒否 1年間の野球浪人生活  

【現実世界】1989 元木大介(上宮)1位指名も入団拒否 1年間の野球浪人生活

●野茂英雄? 影丸? 犬飼知三郎? 元祖トルネードは誰だ?

【水島予言】1988 『おはようKジロー』で野球王国・千葉に「千葉チキンズ」登場  

【現実世界】1992 野球王国・千葉に念願のプロ野球チーム「千葉ロッテマリーンズ」誕生

【水島予言】1977 甲子園に怒号&帰れコール 明訓4番・山田太郎 まさかの5打席連続敬遠

【現実世界】1992 甲子園に怒号&帰れコール 星稜4番・松井秀喜 伝説の5打席連続敬遠

■[リスト]水島野球マンガ全33作品

■野球マンガを描いて50年、30作以上、その「人気No.1」キャラクターは?  

【完全クロニクル「水島予言」&「時代とのシンクロ」】
[後編]1995~2022 「ドカベンプロ野球編」から「夢の二刀流選手結実」まで

【水島予言】1984 優勝がかかった大一番 『大甲子園』であの選手が「勝つ、勝つ、勝つ」

【現実世界】1994 優勝がかかった大一番 10・8決戦で長嶋監督「勝つ、勝つ、勝つ」

●1994年、景浦安武の王貞治超えが呼び込んだ王ホークス誕生   

【水島予言】1990年代前半 水島作品で突如増えるイチロー的な「左打者で俊足」選手  

【現実世界】1994 鈴木一朗からイチローへ シーズン200本安打達成は夢の4割挑戦への始まり

●必然だった!? 90年代中盤のドカベン復活&「プロ野球編」始動  

●1995年。オールスターファン投票と横浜開催を引き当てた水島新司  

【水島予言】1996.5 『ドカベン プロ野球編』で西武・渡辺久信 魔球披露&完全試合達成  

【現実世界】1996.6 全盛期は過ぎたはずの西武・渡辺久信 ノーヒットノーラン達成

●描かれなかった世界『あぶさん メジャーリーグ編』構想  

【水島予言】1975 真田一球、巨人学園へ デビュー戦レーザービームと高校球界驚愕の“忍者野球”  

【現実世界】2001 イチロー、アメリカへ いきなりのレーザービームと全米驚愕の“忍者野球”

【水島予言】1973 悲願の優勝へシーズン最終戦 メッツの代打・虎井虎之介「逆転サヨナラ優勝決定弾」

【現実世界】2001 悲願の優勝へシーズン最終戦 近鉄の代打・北川博敏「逆転満塁サヨナラ優勝決定弾」

【水島予言】2001 東京メッツ 北海道にフランチャイズ移転 札幌ドームが本拠地に  

【現実世界】2004 日本ハムファイターズ 北海道にフランチャイズ移転 札幌ドームが本拠地に

【水島予言】2003 山田世代の海外流出阻止へ パ・リーグに2球団誕生「スーパースターズ編」始動  

【現実世界】2004 「球界再編」騒動勃発 近鉄消滅&東北楽天誕生 プロ野球は新たな時代へ

●北の大地がけん引した2000年代前半の野球界  

【水島予言】1996 景浦安武の息子・景虎 中学3年時にダイエーがドラフト指名  

【現実世界】2004 前代未聞の隠し玉 米在住15歳の辻本賢人を阪神がドラフト指名

●交流戦元年の2005年 水島新司が描いたこれ以上ない交流戦  

【水島予言】1976 “ヘイぎわの魔術師”明訓センター山岡 決勝でまさかのトンネル  

【現実世界】2008 日本代表G.G.佐藤 北京オリンピックでまさかのトンネル&落球

【水島予言】1973~ 岩田の「ハエ止まり」不知火、三原の「超遅球」これぞ水島世界の魔球  

【現実世界】2008 球界騒然“ただのボール”日本ハム・多田野の60キロ遅すぎる魔球

【水島予言】1975 日本初の女性プロ野球選手水島勇気が変革した野球協約とドリームボール  

【現実世界】2008 日本初の女性プロ野球選手ナックルボーラー吉田えり独立リーグに入団

●2009年。景浦安武の引退と、本当に行われた引退セレモニー  

【水島予言】1978 『ドカベン』でいち早く描かれていた「ビデオ判定」への挑戦  

【現実世界】2010 プロ野球で初の「ビデオ判定」導入 のちにリクエスト制度へ

【水島予言】1979 タイトルは「侍」『あぶさん』景浦安武 初の全日本メンバーに  

【現実世界】2012 愛称は「侍ジャパン」 世界一を目指して日本代表が常設化

【水島予言】1977 明訓vs土佐丸の死闘 球審が交換球を落としてボールが散乱&大混乱  

【現実世界】2013 高校野球奈良大会 球審が交換球を落としてボールが散乱&大混乱

【水島予言】1990 「飛ぶボール」「飛ばないボール」を活用した『ストッパー』三原心平  

【現実世界】2013 そのボールは「飛ぶ?」「飛ばない?」統一球問題で紛糾

【水島予言】2012 水島ワールド最終章 セ・パ16球団によるドリームトーナメント開催  

【現実世界】2014 自民党が提言 アベノミクスの目玉施策!? プロ野球「16球団」構想

●年々注目度を増す「阪神園芸」と園芸マジック その先駆けは藤村甲子園とその祖父!?

【水島予言】1973 『野球狂の詩』岩田鉄五郎 50歳で先発マウンド 80歳過ぎてもなお現役  

【現実世界】2015 中日・山本昌、50歳で公式戦の先発マウンドに 球界史上最高齢で

【水島予言】1983,1986 藤村甲子園、プロ最速165キロ 中西球道、高校最速163キロ 水島マンガの最速王

【現実世界】2016,2019 大谷翔平、プロ最速165キロ 佐々木朗希、高校最速163キロ 最速伝説は新時代へ

●夏の甲子園100回大会の年、甲子園球場で終幕を迎えたドカベン世界  

【水島予言】1970 高校生スプリンター池島慎市「日本陸上界の花」が目指すテスト生からの“代走屋”

【現実世界】2021 高校陸上部出身 ロッテ和田康士朗“代走屋”で盗塁王に

【水島予言】1997~1999 女子でも超本格派右腕 日本一へ甲子園で躍動『朝子の野球日記』  

【現実世界】2021 高校女子硬式野球部甲子園球場で初の日本一決定戦

【水島予言】1981~ 水島新司が描き続けた「二刀流」選手の夢 新田、七夕、三原、景虎…

【現実世界】2016 ,2021 投打で超一流の活躍 「二刀流」大谷翔平 日米でMVP受賞

●水島新司、「野球殿堂」候補者入りを辞退。しかし訃報を受けて……  

[年表]水島新司野球マンガと野球界53年の足跡 1970~2022

[おわりに]「野球文化遺産」が後世まで読み継がれることを願って

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