新刊

先生と子どもたちの本当にあった物語

いま、小学校の先生にいちばん、届けたい本!! 学校や教室という教育の現場で繰り広げられた真実の物語。

著者 齋藤 正健
ジャンル 教養
シリーズ エッセイ・ライトエッセイ
出版年月日 2024/05/31
ISBN 9784341088606
判型・ページ数 4-6・184ページ
定価 本体1,500円+税

はじめに 

 それは紅葉が美しい季節でした。
 この季節になると毎年思い出すエピソードがあります。それは私のミスから始まった子どもたちとあるご夫妻との素敵な交流です。
 宮崎県の北部の山間にあるえびの高原は、霧島山の標高千二百メートルにある自然豊かな美しい高原です。この季節になると登山客でにぎわいます。

 かつて、教師だった私も、子どもたちと一緒に遠足に行きました。そこで、思いがけないミスをしてしまった私は頭が真っ白になりました。ところが、そこに救いの神が現れたのです。その救いの神であるご夫妻との出会いから、たくさんの感動的な物語ドラマが生まれていきました。
 このことは、第九章「私のミスから始まった三重のご夫妻との素敵な交流」で詳しくお伝えさせていただきますが、「教育とは愛のドラマ」だと子どもたちから教えてもらいました。

 あれから約半世紀の年月が流れ、子どもたちを取り巻く環境も、先生たちが直面している教育現場の実情も、すっかり様変わりしています。
 特に、スマートフォンの普及は新たな問題を生んでいます。クラスメイトからSNSを通したいじめを受けて不登校になってしまった子どもや、匿名の投稿者からの誹謗中傷で人格を否定された末に自死に追い込まれるなどの深刻な人権侵害も起きています。
 スマートフォンはとても便利なので、正しく使えばこれほど生活に役に立つものはありませんが、その一方で、友だちと一緒にいる時でもスマートフォンばかりいじっている子どもをよく見かけます。子ども同士の心の交流がぐんと減っているようです。

 私が教師として子どもに向き合う中で、常に頭に置いていたのが、学力のみでなく、心を育てること、そして、どの子にも生きる喜びを持たせることでした。子どもは将来の日本を担う大事な宝です。社会の一員としての自覚と誇りを持ち、いたわりのある社会をぜひ創ってほしいとの願いからでした。
 そのために、「子どもとの心のふれ合いを図る」「人々の優しさ、ありがたみ、ご苦労などに気づかせる」を特に留意して、教育に当たってきました。
 子どもと信頼関係を築くことは教育の出発点です。また「気づき」が子どもに自覚と主体的な活動を促し、生きた心の教育に繋がると思ったからです。
 誰もが優しさと良さを持っています。その優しさと良さを引き出し、全ての人々を大事にし、明るく生きる人間を育てるのが教育ではないかと思います。
 私の教職生活三十八年間は、保護者・PTA・地域の方々、それに同僚教師の温かいお心や思いがけずに出会った方々の善意により感謝、感動の体験がいくつもあります。時が経てば経つほどそのありがたみを強く感じます。

 教職生活を去って早二十年、忘れないうちに私の体験をまとめることにしました。私の記録が、教え子やお世話になったみな様へのご恩返しになり、そして、明るい社会づくりに少しでも役立つことになれば、これ以上うれしいことはございません。

令和六年六月吉日

齋藤正健

 

◆著者略歴

齋藤正健(さいとうまさたけ)
1943年宮崎県生まれ。
宮崎大学学芸学部卒業後、1966年4月高千穂町立岩戸小学校に赴任し、教師としての生活が始まる。学級担任の27年間、自分のカメラで全ての子どもとツーショットを撮る。学校行事や宮崎国体・秋の遠足などでのご縁を教育に活かし、作文教育・心の教育に力を入れる。1989年宮崎県教育委員会より半年間の筑波大学での内地留学(国語)。1992年には42日間、文部省中央研修に派遣される。小学校の教頭3校、校長3校を経て退職。退職後は国富町の教育相談員として不登校生の教育支援に当たる。2023年に全国連合小学校長会75周年記念式典で、文部科学大臣より小学校教育振興の功労者感謝状が授与される。現在は国富町の民生・児童委員。

 

発刊に寄せて

昭和の美談で終わらせたくない

私たちの多くは子どもの頃、「昭和」という時代に生きていた。
「昭和」と言っても一括りにはできないが、
教科書に墨を塗った子どもも
大阪万博で月の石を見た子どもも
機動隊に火炎瓶を投げつけていた若者も
みんな「昭和」の教育を受けて育った。
振り返ると、学校はそんなに楽しいところではなかったが、
みんな子どもらしく、全力で駆け抜けたように思う。

あの時代には今の時代にないものがふんだんにあった。
遊具はないけれどそこそこ遊べる広さの空き地、
翌日には教室で話題になるテレビ番組、
半世紀過ぎた今でも忘れられないユニークな先生。

齋藤正健先生の教師時代の一つ一つのエピソードを読んでいると
昭和の風景がありありと脳裏に浮かんでくる。
齋藤先生が受け持った子どもたちのような、
あんな素敵な経験はしなかったが、
自分もその風景の中に違和感なく溶け込んでいるように思えるのだ。
遠足での全体写真。齋藤先生のカメラのフィルム切れ。
困っていたら自分のカメラで撮ってくれた通りすがりの観光客。
その写真を後日、クラスの人数分焼いて学校に送ってくれた。
なんて素敵な出会いなんだ。
しかし、そこで物語は終わらなかった。
そこから始まった展開がすごかった。

夏休み、国体選手の控室になった教室。
選手たちがその教室に入ると、
黒板には齋藤先生からの激励のメッセージ。
その気持ちに選手たちは感動したのだろう。
二学期の始め、登校した子どもたちが目にしたのは
黒板いっぱいに書かれた選手たちからのお礼のメッセージだった。
そこから始まった次なる展開もすごかった。

一日一日をワクワクしながら生きていると、
次の展開が面白くなってくることを、
「齋藤正健劇場」で観させてもらった。
学校や教室という教育の現場で繰り広げられた真実の物語。
齋藤先生と子どもたちの温かい物語に私は泣いた。
今になって思う。
人生って誰かに伝えたくなる演劇のシナリオだったんだ。

この本を手にした小学校の先生たち、
この本の中の一つでもいい、
「やってみよう」ということがあったらやってほしい。
子どもたちはやがて未来を生きる。
未来に生きる子どもたちは必ず過去を振り返る時が来る。
そこに先生、「あなた」が登場してほしい。
想い出に登場する先生を「恩師」と呼べる人は幸せな人だ。

日本講演新聞編集長 水谷もりひと

はじめに

発刊に寄せて 水谷もりひと

担任時代の想い出

一 外国の子どもたちとの図画の交換
二 教え子とのツーショット
三 家庭訪問での子どもの作文
四 とっておきの修学旅行
五 大好評の誕生日プレゼント
六 モミジの下での健康観察
七 友だちの話から生まれたかわいい紙芝居
八 宮崎国体が縁での素敵な交流
  第一部 信州大学弓道部のみな様との出会い
  第二部 弓道長野県代表選手との出会い
  第三部 選手の母親との出会い
  第四部 母親との想い出
九 私のミスから始まった三重のご夫妻との素敵な交流
  第一部 救いの神様が現れた
  第二部 写真の贈り主が分かる
  第三部 ご夫妻との涙の再会

校長時代の想い出

一 子どもが夢中になった「さつまいも作り」
  地域の人々を虜にした「さつまいも作り」の発表会
二 おばあちゃんの手縫い雑巾(本校)
三 ご婦人からの一通の手紙から始まった素敵な交流(分校)
  第一部 椎葉村のご婦人との出会い
  第二部 ご婦人の分校訪問
  第三部 分校の子どもたちの椎葉訪問
四 生きる勇気を子どもたちに(困難に負けない力)

おわりに

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