正誤表『大学受験 日本史 形式別演習ドリル』 - 2024.04.03
心揺るがす講演を読む2
その生き方、その教え。講演から学ぶ
はじめに
どれくらいの数の講演を聴いてきたでしょうか。日本講演新聞(前身・みやざき中央新聞)には、この30年で1500人ほどの講演会の講師の話が掲載されています。 今読み直しても一つとして時代に流され、色あせているものはありません。
日本講演新聞には『転載過去未来』というコラムがあり、そこに毎週ひとつ、過去の講演記事を転載しているのですが、どの記事を読んでもダイヤのように輝きを失っていません。スピーチのネタになるし、勉強になります。
「最も心が揺さぶられた話は誰の講演ですか?」と聞かれたら、迷わす元私立高校の国語教師だった境野勝悟先生の講演と答えるでしょう。
境野先生がまだカトリック系の高校で教鞭を執っていた頃、卒業式でドイツ人の校長が卒業生にこんな祝辞を贈りました。
「私は君たちに『さよなら』とは言いません。なぜならその意味が分からないからです。英語の『グッドバイ』は元々『ゴット・バイ』、すなわち『神があなたのそばにいますように』という祝福の言葉でした」。
そして校長は「グッド・バイ、シー・ユー・アゲイン」と言って祝辞を終え、壇上を降りました。
その夜の懇親会で校長は教員に「君たちは『さよなら』の意味を知っていますか?」
と問い掛けました。知っている人は誰もいませんでした。
呆れた校長は国語教師の境野先生にこう命じました。「あなたが『さよなら』の意味を調べて私に報告してください」
90分の講演の中で境野先生は「さよなら」の意味を説明しました。
私たち聴衆は境野先生の語り口に魅了されました。同じ話を誰がしても「さよなら」 の意味をあれほど面白く、深く話せる人はいないでしよう。
別の講演会では「閻魔大王」の話を聞きました。それは私たちが知っている怖い閻魔大王ではありません。笑っている閻魔大王の話でした。
栃木県益子町にある西明寺というお寺に「笑い閻魔」がいるというのです。
人は亡くなるとまず閻魔大王のところに行くといわれています。そこで生前、どう生きたかを聞かれ、それによって極楽に行くのか地獄に行くのかを閻魔大王が裁くというわけです。
ある日、一人の男が閻魔大王の前で「私は生前一度も嘘をついたことがありません」 と訴えました。だから自分は極楽に行く資格があるというのです。
閻魔大王はそれを聞いて声をあげて笑いました。男は怪訝な顔をして閻魔大王に問います。「私は真面目に生きてきたのです。何がおかしいのですか?」と。
大王は笑い転げながら言いました。「おまえ、それじゃつまんない人生だっただろう」
真面目に生きることは悪いことではありませんが、「クソ」が付くほどの真面目さは面白くないのかもしれませんね。
せっかく一度しかない人生を生きているのだから、少しくらい嘘をついたり、悪事を働いたりしながら、上手に世渡りをしていくところに楽しい人生の妙味があるのではないか、と境野先生は話していました。
講演会の面白さは、その講師の話の中身だけではなく、人柄にまで触れることができるところにあります。
活字になった記事では講師の人柄まで伝えることはできませんが、それでも「要約」ではなく、語り口調のまま掲載することで少しでもその人柄が伝わればいいなと思っています。
「講演会があったらとにかく行ってみろ、聞いてみろ」と私はたくさんの人に言ってきました。時間的にそれが叶わない人なら「日本講演新聞を読んでみろ」と。
講演会でネガティブな言葉を発する講師は一人もいません。講演会に行って話を聞くと心が前向きになります。
今ではオンラインで講演を聴くこともできるようになり、益々身近になってきましたが、それを自分の人生に取り入れるかどうかは、あなた次第です。
『心揺るがす講演を読む』はおかげ様で、バート2を発刊させていただけることになりました。この著書に登場する10人の講師のお話はどれも、読む人の心を揺るがすことでしよう。
読んだら読みっぱなしにせず、先生方の本を読み、講演会の会場に足を運んでくださると、またいい出会いがそこに用意されていると思います。
日本講演新聞 魂の編集長 水谷もりひと
監修:水谷 もりひと
日本講演新聞編集長
昭和34年宮崎県生まれ。学生時代に東京都内の大学生と『国際文化新聞』を創刊し、初代編集長となる。平成元年に宮崎市にUターン。宮崎中央新聞社に入社し、平成4年に経営者から譲り受け、編集長となる。28年間社説を書き続け、現在も魂の編集長として、心を揺さぶる社説を発信中。令和2年から新聞名を「みやざき中央新聞」から現在の「日本講演新聞」に改名。
著書に、『心揺るがす講演を読む』『日本一心を揺るがす新聞の社説1〜4』『日本一心を揺るがす新聞の社説ベストセレクション(講演DVD付)』『この本読んで元気にならん人はおらんやろ』『いま伝えたい!子どもの心を揺るがす “すごい” 人たち』『仕事に “磨き” をかける教科書』(以上ごま書房新社)など。
第1章 こんな「生き方」がある
お茶の文化を通して日本と世界の平和を祈る
茶道裏千家第15代・前家元 千玄室
「未完の夢」が伝えるもの
戦没画学生慰霊美術館「無言館」館長 窪島誠一郎
私にはピアノがあったから
ピアニスト 水上裕子
三陸物語
元毎日新聞東京本社専門編集委員 萩尾信也
詩が開いた心の扉
作家 寮美千子
第2章 「先人に学ぶ」生き方
心が全ての発信源
北法相宗管長・清水寺貫主 森清範
論語から正義を問い掛ける
元検事、元弁護士 田中森一
縁を生かす
作家 鈴木秀子
本との出会い 人との出会い
NPO法人読書普及協会会長、逆のものさし講代表、読書のすすめ店主 清水克衛
自分を嫌わないで
早稲田大学名誉教授 加藤諦三
あとがきにかえて
「書く」こと、その先にあるもの
日本講演新聞 魂の編集長 水谷もりひと