新刊

一に愛嬌 二に気転

ブル-スの女王・淡谷のり子の“毒舌でごめんなさい”

NHK連続ドラマ小説「ブギウギ」主人公「福来スズ子」の生涯の良きライバル「茨田りつ子」のモデル-淡谷のり子の“辛口エッセイ”

著者 淡谷 のり子
ジャンル 教養
シリーズ エッセイ・ライトエッセイ
出版年月日 2024/03/18
ISBN 9784341088552
判型・ページ数 4-6・184ページ
定価 本体1,300円+税

まえがき

 最近、私は生きているのがつらくなることがあります。といっても、自分の老後が心配だとかそういうことではありません。最近でこそ、ちょっと足を悪くして、長時間立っていたり、歩くのに不自由を感じるようになりましたが、そのほかは体はいたって健康です。
 歌も、現役歌手として唄いつづけ、コンサートを開けば、私の昔のことなどまったく知らない若い音楽ファンが集まり、熱心に私の歌を聞いてくれます。また、このごろはどうしたわけか、私の話を聞きたいという方もふえ、講演などに招かれて大勢の女性の方のまえでお話しすることもたびたびです。

 妹と二人の生活も快適です。近くに、私の娘夫婦も住んでおりますし、世の中、とにかく便利になりましたから、日常生活であまり不自由を感じることもありません。私を助けてくれるスタッフの人たちにも恵まれ、みなさんが私をだいじにしてくれます。その意味で、私ほど恵まれた人間もいないかもしれません。 
 にもかかわらず、私が生きていくのがつらくなるというのは、最近の世の中をみると、ほんとうにいやな時代になってしまったとつくづく感じることが多いからです。生きていくかいがないとでもいいましょうか。
 とくに、今の人たちから“心”が失われているのを見るのが、私にとっては何よりもつらいことです。なかでも、最近の若い女性、いったいどうなっているのかと思います。自分勝手で、自分さえよければ他人のことなどまったく気にかけない、そういう人があまりに多いのです。

 人から親切にされてもお礼の言葉もいえず、年配者や目上の人への心遣いもなければ、自分より弱い人へのいたわりもない。ですから、気がきくどころの話ではなく、何かあると、すぐふくれて仏頂面(ぶっちょうづら)をする…。そういう若い女性の姿を目にするにつけ不愉快になりますが、それ以上に気がかりなのは、こんな人が将来、母親になったとき、その子どもをどう育てるだろうか、ということです。こんな母親に育てられたら、どんなにいい子だって、ダメになってしまうのではないでしょうか。
 おそらく、この人たちは、これまであまり注意を受けたこともなく、自分たちのしていることがいかに無神経なことか、気がついていないのかもしれません。
 そこで、お節介を承知で、“女性の先輩”として、あえていろいろな苦言を呈することにしました。耳の痛いこともあるかもしれませんが、私の言うことに、しばらく耳を傾けていただきたいと思います。

 「一に愛嬌、二に気転」といいますが、ほんとうに頭のいい女性というのは、いつもにこやかでやさしく、人の気持ちがよくわかり、相手の立場に立って考えることのできる人だと私は思います。
 そういう“いい女”が一人でもふえてくれたら、世の中がもっと明るく楽しくなって、私だけでなく、この本を読んでくださるあなた自身が、楽しく毎日を過ごせると思うのです。

淡谷のり子

♦著者略歴

淡谷のり子(あわやのりこ)

1907 (明治40)年青森市に生まれる。
昭和4年東洋音楽学校(現東洋音楽大学)卒業後、歌手としてデビュー。
昭和12年『別れのブルース』が大ヒットし、“ブルースの女王”と呼ばれる。昭和46年 日本レコード大賞特別賞、同47年紫綬褒章受賞。心を唄える数少ない歌手として、若いファンの注目も集めている。また、歯に衣着せず、若い歌手にズバリ直言するなど、スジを通す生き方に拍手をおくる人も多い(ゴマレデイスより)。1999 (平成11)年没。

第I章 女にとって、もっとも大切なことは

◇結婚にあこがれるのも、いいかげんにしなさい
結婚式の楽しさが、そのまま結婚生活だと思う錯覚
あこがれだけでは、結婚はうまくいかない
幸福も不幸も、自分でつくりだすもの
◇結構を意識したら、同棲するのも現代女性の知恵
パートナーをよく見きわめないで結婚しても、うまくいかない
同棲のすすめ
“試験結婚”は、現代女性の知恵
◇結婚、結婚と、男に迫るだけが能じやない
私は結婚に向かなかつた女でしたが・・・
別れになるのも、男と上手につきあう方法
◇家事ができても、女らしいとはいえない
かたどおりに家事をこなすより、女にはもっとたいせつなものがある
◇結婚式に“ミエ”をはるのは、だれのためですか
盛大な結婚式をあげて、すぐに別れたマザコンカップル
“見栄婚式”に使うお金があったら、結婚後に使え
◇子育てがいやなら、結婚するのをやめなさい
「お母さん、こんどお嫁に行くときは私も連れてって」
仕事場に乳児を連れてくるのが、新しい女の生き方!?
子育てのあいだは、女であることを忘れなさい
◇子どもにクラシックを聞かせる母親になってほしい
クラシックは、美しい心を育ててくれる
子どもに聞かせるまえに、母親がクラシックを好きになってください
◇あなたは、子どもを叱れる母親になれますか
子どもを叱るのを恐れていたら、子どものためにならない
「勉強しなさい」と言わなかった私の母の教育法
◇お年寄りを大事にする女は幸福になれる
祖母が教えてくれたこと
祖母が私を助けてくれた
お年寄りを大事にしない女は、自分も大事にされなくなる

第Ⅱ章 あなた、それでも女ですか

◇「ありがとう」も言えないなんて、育ちが疑われるだけ
当たり前のことをしてほめられるなんて、むしろ悲しいこと
にこやかにあいさつのできる女は美しい
◇感謝する気持が、その女性を美しく見せる
私がいつも、小さなのし袋を用意している理由
チョコレ-卜の箱に隠されていた真心
感謝する気持のない女性は、顔までさもしくなってくる
◇やさしさは、相手の立場がわかるところから生まれる
「あんた、淡谷のり子でしよ。サィンしてよ」、これではサインもできません
若い女性には見ならってほしくない非常識な母親たち
色紙の裏表もわからなかった“名流”の奥様たち
相手の立場がわからなければ、思いやりややさしさも生まれてこない
◇「ありがとう」も言えないなんて、育ちが疑われるだけ
荷物を持ってあげようとしたのに、「何すんのよ!」
◇心のない人は、どんな美人でも醜くなる
私はオカチメンコだから、自分の魅力づくりを考えた
私と同じ顔をした太地喜和子さんが魅力的な秘密
美人ほど、“性格ブス”になりやすい
外見だけでない、自分の魅力づくりをだいじにしてほしい
◇恥じらいを失ったとたん、女としての魅力も消える
下品なことを得意顔で話す女がふえてきた
人前で抱きあうなんて、外国映画のようなわけにはいきません
恥じらいがなくなったら、女ではありません
◇いい悪いのケジメをつけないと、ニセモノの女になるだけ
“ニセモノ人間”にはご用心
ニセモノばかりに接していると、人間までニセモノになる
“ニセモノ”にだまされて、一千万円とられた
◇何でもお金で片づくと思っていると、心は貧しくなるだけ
お金がすべてと思っていませんか
便利さはお金で買えても、楽しさは買えない
子どもの料金を払っていれば、子どもが騒いで迷惑をかけてもいいのか

第Ⅲ章 気がつく女と、鈍感な女は、ここが違います

◇言葉に鈍感な人は、すべてに鈍感
誤字に鈍感な人は、女としても鈍感
いくら大先生の歌詞でも、いやなものはいや
勉強しない人は、カスでしかない
◇「やっぱ」「それで一」では、どんな美人も台無しです
「やっぱ」では、顔まで間が抜けて見えます
ていねいできれいな字を書く女性は、それだけで美しく見える
◇自分の魅力に磨きをかけたいなら、日本語に磨きをかけること
私が横文字で唄わないわけ
付け焼き刃のフランス語で恥をかいたシャンソン歌手
横文字ばかり使うのは、頭がカラッポな証拠
◇もっと魅力的な女になるために、これだけはおすすめしたい
本を読むのをめんどうがるようでは、若いうちからボケますよ
読書好きの母親のおかげで、娘も本好きに
「下手に唄え」と注文される間違ったご時世
◇責任もとらずに「自立」を騒いでも、自立はできない
マネジャーがつくまでの十年間、私は何でも一人でやった
自分の都合のいいときたけ甘えるのは、身勝手すぎます
◇「男に負けられない」と言っていても、ギスギスするだけ
男と競争しても、おもしろいことはない
男をうまく立てるのが、女の知恵
「私も働いているのだから」は禁句
◇仕事をするなら、女の甘え、わがままは捨てること
私はわがままな女だから、いくら気を遣っても遣いすぎることはない
男性バンドマンには、ひとこと注意するにも気を遣った
仕事をするなら、男の人の気持を理解することがだいじ

◇「淡谷のり子さんのお顏が怖すぎて…」
美川憲一が大先輩から受け継いだ「お金術」
Asagei Biz (2023年4月10日より)

復刊にあたり

※本書は1987 (昭和62)年刊行の『一に愛嬌 二に気転』(ゴマレディス)を再編集して新装版として刊行したものです。

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