やっぱり、東大を目指そう!

普通の家庭、地方高校出身でも、「東大に入って良かった」

\何だかんだ言っても/東大は目指す価値があります―偏った情報を信じて、親も子も最初から東大受験を諦めてはもったいない!

著者 岩切 紀史
ジャンル 教養
シリーズ エッセイ・ライトエッセイ
出版年月日 2021/09/27
ISBN 9784341087982
判型・ページ数 4-6・240ページ
定価 本体1,364円+税

はじめに

1.本書を書こうと思った動機

 「東京大学・東大生」—皆さんは、どのようなイメージがあるでしょうか。
 東大は世の中の関心を集める存在で、東大に関する情報・報道は、以前から一定程度存在していました。
 かつて、昭和の終わり、私が受験生だった頃は、いわゆる合格体験記・勉強法のほか、知識人・評論家の東大批評(ほぼ批判)が多かったという印象があります。
 その後、次第に、東大生・東大卒業生自身、東大生を育てた親(保護者)、学習塾・予備校(講師)等により、各種情報が発信・報道されるようになりました。さらに、たとえばバラエティ番組やクイズ番組で取り上げられることが多くなり、話題になった漫画、テレビドラマも登場し、その時々で波はあれど、まさに「東大(生)ブーム」という言葉が当てはまる状況があります。
 その中には、事実に基づいた・有益な情報もありますが、残念な情報・偏った印象を与える情報も溢れています。

 ちょっと考えつくだけでも、「東大生の家庭はお金持ち・富裕層で、学歴はお金次第」「東大に合格するには特別な家庭環境と英才教育が必要」「都会出身で名門(私立)高校、中高一貫校の学生でなければ東大に合格できない」「学習塾・予備校に通い、家庭教師をつけなければ東大に合格できない」「地方在住だと東大合格は困難で、合格できても入学後は東大に馴染めない」「東大生は凄い学生の集まりで、『一般人』が東大に入学すると馴染めないし授業についていけない」 「東大生は変な人が多い」「東大生は社会に出たら使えない」「東大卒といっても人生うまくいくとは限らない」等々。
 東大生・東大卒業生と、その家族・教師・身近な人達ならば「それは違う」「ちょっと言いすぎじやないの?」と分かることでも、そうではない多くの人達は、それらの情報を信じてしまいます。とくに地方では、東大生・東大卒業生が少ないので、それらの情報の影響は大きいです。

 たとえば「東大生の家庭の世帯年収はこんなに高い」「お金持ちだから東大に合格できた」ということは、よく言われます。私も、いまだにと言いますか、東大在学中よりも、むしろ今の方が「お宅はお金持ちで、学習塾や予備校に行ったのでしょう」と聞かれます。
 子供の頃から我が家を知っている人達は「そうではない」と知っているので聞いてきませんし、実際、そうではありません。しかし、そうではないと証明する方法はありません。聞き流すしかないのですが、実際にはそうではないにもかかわらず、「お金の力」と思われることは不本意極まりないです。

 たとえば「『日本人の平均年収』が400万円台半ばなのに対し、東大生の家庭の『平均世帯年収』は900-1000万円台だから、お金持ちしか東大に合格できない」(※注)、そのため、「学歴はお金次第だ」と言われます。ちょっと考えれば分かるのですが、「日本人1人の平均年収」 と「平均『世帯』年収」の比較をすれば、世帯年収(今の時代、夫婦共稼ぎが多いでしょう)が 1人の年収の「倍」程度になるのは当たり前です。

 もう少し詳しく言えば、「10代から70代以上の全世代」の「1人」の平均年収と、「大学生が居る親(保護者)、つまり、おそらくは他の世代より年収が高いであろう働き盛りの世代に属する、それも、おそらくは2人(以上)が収入源」の平均「世帯」年収を比較しているので、後者が前者の「倍」程度になるのはなおのこと当然ということに気付かなければなりません。
 週刊誌等一部メディアで、センセーショナルな数値比較で注目を集めているこのような情報の 「本質」に気付かず、信じてしまう人が多いことは非常に残念です。
 本来比較するべきは「大学生が居る家庭の平均世帯年収と、東大生の家庭の平均世帯年収」です。この比較でも東大生の家庭の世帯年収はまだ高いとされていますが、必ずしもそうとは言い切れません。
 このことは第3章:データ編 東大生の分析の2と3で詳しく述べるので、ここでは「東大生の家庭=お金持ち」という見解、その基になっているデータ比較の問題点を指摘するにとどめます。
 偏った情報を信じて、受験生本人が東大受験を諦めたり、そもそも目指さない、また、家族(親)が、その子供等に東大受験を諦めさせることは、本人・家族のみならず、社会・国家の損失です。

 今回筆を執ったのは、偏った情報、必要以上に東大・東大生を崇める・貶める風潮が広がっていることに一石を投じたいと考えたからです。
 ※注 東大生の家庭の平均世帯年収(「東京大学 学生生活実態調査」の調査票の設問では「学生の生計を支えている方<複数回答可能>の合算額」となっており、本文では家計支持者の年収額と世帯年収を同一のものとして扱っているので、以下では世帯年収とします)—この額は公表されていますが、回答者の数と回答割合、対象者が学部学生と大学院生等、調査年度により差があり、大まかな額しか挙げられません。

2.私について

 私について簡単に述べますと、昭和45年(1970年)生まれ、宮崎県出身です。父は地元高校を卒業後、関西の私立大学を卒業して公務員(すでに他界)、母は地元高校を卒業後公務員となり、結婚退職して専業主婦でした(現在も元気です)。
 公務員は高収入という誤解がありますが、最近ようやく「そうではない」という情報が出回り始めました。そもそも公務員の給与は各種法令で「民間準拠」(民間と比べて高すぎず低すぎず。 比較対象となるのは一定規模以上の民間事業所)となっています(「ラスパィレス指数」というもので比較します)。
 実際、以前から、国家公務員は人事院、地方公務員は各地方自治体から給与等が公表されていたのですが、なぜか注目されません。好景気の時期、とくに高度経済成長期やバブル期は、公務員の給与の上昇が民間給与の上昇に追いつかず、民間の方がはるかに高収入で、就職先として、公務員は不人気でした。
 また、専業主婦というとこれまたお金持ちと思われるかもしれませんが、昭和の時代は「女性は勤めずに結婚」「勤めても結婚退職」で専業主婦になるケースが一般的で、友人の母親も多くは専業主婦で、遊びに行くとそれぞれの「お母さん」が家に居ました。
 私は一人っ子です。これは当時としては珍しい部類に入ります。
 小学校は公立(市立)小学校で、父の仕事の関係で3回転校しています。一時期首都圏に住んでいたこともあります。家では全く勉強せず遊び回っていました(宿題はしていましたが)。とくに野球とゲーム、漫画が好きで、さらによく眠っていました。小学生の頃に「東大」の存在を知りましたが、具体的に意識はしていませんでした。
 中学校は、第1章:心得編 目指せ!東大生の7で述べるように、突然国立大学附属中学校を受験することになりましたが、合格することができました。この学校は「勉強勉強」ではない自由な校風で、部活もしていました。初めて本格的に勉強し、「東大」を目指せるのではないかと思った時期です。
 高校は、家の近くの県立高校に入学しました。この頃には東大文I (法学部)を目指していたのですが、理系に重点を置く理数科に入学しました。進学校のため勉強中心で、人生で一番勉強した時期です(なお、学習塾・予備校に通ったことはなく、家庭教師も居ませんでした)。

 この甲斐あって、平成元年(1989年)4月、現役で東京大学教養学部文科I類(法学部進 学予定)に合格しました。東大では、勉強もしつつ遊びもサークルも楽しみ、法学部進学後、4 年生時に国家公務員採用I種(昔の上級甲種、今の総合職)試験法律職(今の法律区分)に合格しました。
 平成5年(1993年)4月、自治省(現・総務省)に入省し、官僚として勤めましたが、その後、学者の道に進むことを決断し、東京大学大学院法学政治学研究科の入試を受験し合格、平成9年(1997年)4月に入学しました。専攻は憲法と政治学で、平成11年(1999年)3月に法学修士号を取得、平成17年(2005年)3月に法学博士号を取得し「東京大学大学院法学政治学研究科 博士論文特別優秀賞」を受賞しました。
 その後、地元の大学で教授となり、憲法、政治学、行政法(公務員法)、国際法の授業を担当しつつ、研究・執筆を行ってきました。

 現在は、法学博士 (東京大学)、元自治省官僚として活動しています。
 我ながら、一度官僚として勤めたのに学生(大学院生も学生です)に戻るという経験は、特殊と言えば特殊だと思います。進路の転換、そこから新たに道を切り拓き努力する力は、東大受験時の勉強を始めとする、それまでの人生経験から得られました。

3.本書の特徴

 本書は、そのような私の視点から書くことになります。ここでは、とくに全体的な特徴と考えられることを述べ ておきます。

①私の東大受験が平成元年(1989年)3月ということで、端的に言えば、「古い」と思われるかもしれません。当時と今では高校までの授業内容も異なりますし、参考書.問題集の「定番」も違います(一部は今も名著とされているようです)。
 しかし、受験勉強の考え方、勉強の基本は、それほど変わっていないと思われます。

②学校・教育.家庭環境について、いわゆる「昭和」だったということも、今とは大きな違いです。世の中は今より治安が悪く、学校では体罰が当たり前でした。一般家庭でも、今ならDVとか虐待とか育児放棄とされるような状況もそれほど珍しくありませんでした。また、今は貧富の格差が大きいと言われますが、体感的には昔の方が大きかったです。

③当時、パソコンは普及し始めていましたが、インターネットはありませんでした。通信兵の装備のような移動電話はありましたが、一般人は携帯電話を持っていませんでした。
 これに対して、今は情報が溢れて簡単に手に入ります。それでもなお「都会と地方の情報格差」があると言われますが、当時と比べると天と地です。

④地方(私の地元)では学習塾・予備校はほぼなく、あっても小規模なものでした。今のようにインタ-ネット・衛星で東京の予備校の授業を受けたり、オンラインで必要な授業を受けたりすることは、夢のまた夢でした。参考書・問題集を取り寄せるのも一苦労で、書店に注文して 1ヶ月かかって届いてみたら別の本ということもありました。
 通信講座はありましたが、郵送のため往復の時間はかかりますし、インターネットを通じたリアルタイム・双方向の指導はありませんでした。

⑤現在の東大生、卒業して間がない東大卒業生が本を書く場合、受験情報や東大の内部の情報等
をはじめ、現在の状態により近い内容になりますが、本書の場合、その後の人生経験、また、学生時代の友人達のその後の人生を踏まえた視点を加えて書いています。
 とくに、受験勉強及び勉強一般に関しては、中学校入試、高校入試、東大入試に加え、国家公務員採用I種(現・総合職)試験、東大大学院入試の合計5つの試験、さらには東大大学院での法学修士号取得審査(修士論文審査と面接口述試験)、法学博士号取得審査(博士論文審査と面接口述試験)の2つの審査を、全て一発で突破してきた経験を基に書いています。

⑥私は、平成元年(1989年)4月から平成5年(1993年)3月、平成9年(1997年)4月から平成17年(2005年)3月の間の合計12年間「東大生」だったことになります(厳密には、平成16年<2004年>4月からの最後の1年は、博士論文審査期間のため「東大生に準ずる」立場でした)。平成5年(1993年)4月から平成9年(1997年)3月の4 年間を挟み、足かけ16年間、東大に「関与」していたことになります。
 その後も、大学という場に在籍し、他の職業に就いた人よりも東大・東大生についての情報を入手できましたし、また、東大・東大生について考えていました。つまり、東大の内部者・関係者としての経験が長いため、東大卒業後一定の年数が経過していますが、ある程度の客観性はあると思います。ただ、私が在籍していた文科I類・法学部の情報が主になるという側面はあります。

⑦私は意識したことはありませんが、「類は友を呼ぶ」で、地方県立高校から東大に入学した友人が相対的に多くなっている可能性はあります。もちろん、都会の名門(私立)高校出身の友人も多く居ましたので、ある程度の客観性は保たれているとは思いますが、本書の記述は「地方寄り」「公立寄り」の内容になっているかもしれません。

⑧私は未婚・独身なので、子育てや子供の受験等について実体験をしていません。父はすでに他界しているので、本来は母が書くべき内容です。本書は、母にも随時聞きつつ、子供の立場から見た内容、「育てられ方」という視点も含めて書いています。

 次上のほかにも、私の視点・立場がどうしても反映されるので、読む際には読者の方のご判断で解釈・調整してください。
 内容としては、たとえば「地方公立校という『逆境』から東大に合格した」とか「特別な家庭で特別な教育を受けた(保護者の立場からは『教育した』)」という方がインパクトがあると思います。しかし、本書は、そのようなスタンスは取っていません。
 私は地方公立校からの東大受験を逆境と思っていませんでしたし、実際、逆境ではありません。私の家庭は特別な家庭ではありませんし、特別な教育を受けていません。
 私のような人間は例外じゃないかと思う方も居るでしよう。そう思われる方にとっては、また、「例外もある」ということで、「他の情報とのバランスを取る」という意味があると思います。「多数派」ではないものの、「例外」と言われるほどではないと思いますが、例外だとしたら、今後、私のようなケースが例外と扱われることがない状況になってほしいものです。

 最後になりますが、本書は受験用の参考書や問題集ではありませんし、家庭での教育法等といった親御さん向けの教科書的なものでもありません。
 紙幅の関係もあり、全ての内容を網羅することはできませんし、内容を広げすぎると「濃度」 が薄くなってしまうので、内容を絞って書いています。私は受験・教育のプロではなく、ある程度の客観性を保ちつつも、経験を基にした見解・考えを書いています。

 読者の方の判断、決定、その結果、さらに実行してうまくいかなかった、その他、万一何らかの損害が生じた場合であっても、著者として法的責任・事実上の責任を負いませんので、あらかじめご了承ください。また、特定の主張・方法・組織・団体・個人等をことさらに推奨・否定・賛美・中傷するものではありません。あくまで私の一見解とご理解ください。 
 内容の正確さにつきましては、できるだけ正確な内容になるよう心がけておりますが、私の個人的見解も含め、その正確性を保証するものではないことをご了承ください。
 肩肘張らずに読み、參考になる点を参考にしていただき、そして、読者の方が、「東大を目指す」「子供に東大を目指させる」きっかけになれば幸いです。

令和3年(2021年)8月    岩切紀史

◆著者略歴

岩切 紀史(いわきり のりふみ)

昭和45年(1970年)12月生まれ。宮崎県出身。
平成元年(1989年)3月に宮崎西高校理数科卒業、現役で平成元年(1989年)4月に東京大学教養学部文科Ⅰ類入学。平成5年(1993年)3月に東京大学法学部を卒業し、平成5年(1993年)4月に自治省(現 総務省)に入省。国家公務員(Ⅰ種)として勤務。
その後、平成9年(1997年)4月に東京大学大学院法学政治学研究科修士課程に入学し、平成11年(1999年)3月に修士課程修了(法学修士号取得)。平成17年(2005年)3月に東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士号取得)。「東京大学大学院法学政治学研究科 博士論文特別優秀賞」受賞。

法学博士号取得に先立ち、平成16年(2004年)10月から地元(宮崎県)の大学で助教授、教授として勤務。現在は法学博士(東京大学)、元自治省官僚として執筆・講演を行う。専門は憲法、政治学、行政法、地方自治法、公務員関係。外国の研究対象はヨーロッパとくにドイツ。

著書に『憲法学の現代的論点(共著)』(有斐閣 初版2006年/第二版2009年)がある。

◆ 目次 ◆

はじめに

第1章:心得編 目指せ!東大生

1 入学試験に合格すれば入学できる
2 お金がないから、地方だからと諦めるのはもったいない
3 地方在住、お金がないからこそ「一発逆転」
4 遺伝要素
5 東大に行く、東大生に会う
6 今がチャンス
7 運の要素
8 東大受験をゲームとして考える
9 目標は何でもいい

第2章:心得編 東大に合格する生活

1 睡眠について その1
2 睡眠について その2
3 朝型
4 夜型
5 食事
6 運動とスポーツ
7 風呂の重要性
8 恋愛
9 各種メディア — 古典的なもの その1
10 各種メディア — 古典的なもの その2
11 各種メディア — 新しいもの その1
12 各種メディア — 新しいもの その2

第3章:データ編 東大生の分析

1 とくに地方ではメディアの報道を鵜呑みにしやすい
2 東大生の家庭はお金持ち、世帯収入が多い その1
3 東大生の家庭はお金持ち、世帯収入が多い その2
4 専業主婦・教育ママが多い
5 親が高学歴
6 地方は不利
7 名門校有利、地方公立校不利
8 変人が多い
9 まとめ

第4章:実践編 東大に合格する勉強法・知識編

1 「お受験」について
2 「中学受験」について
3 「高校受験」について
4 「公立か私立か」について
5 「学習塾・予備校」について
6 「タイプ別勉強法」について
7 「3ヶ月集中勉強法」について
8 「試験と目標」について
9 「目標と計画」について
10 「受験は競争だ」について
11 「質か量か」について
12 「集中力」について
13 「記憶法」について
14 「休み方」について
15 「勉強する場所」について
16 「勉強時間の確保」について

第5章:実践編 東大に合格する勉強法・データ編

1 東大入試の分析
2 共通テスト(センター試験、共通一次試験)
3 「東大入試の傾向」について
4 参考書・問題集 その1
5 参考書・問題集 その2
6 「ノート活用」について
7 「科目」について
8 「過去問と模試」について
9 「1万時間の法則」について

第6章:人生編 東大に入って良かった!

1 肩書が手に入る
2 素晴らしい人脈、優秀な友人
3 最高の大学
4 部活・サークル
5 そこそこモテる
6 選択肢が広がる
7 達成感と自信、余裕

番外編 東大に入らなければ良かった!?

1 東大生、東大卒と言いにくい
2 妬まれる、嫉妬される、足を引っ張られる
3 地元・地方に居づらい
4 仕事関係
5 実力で結果を出してきたことの影響
6 世間知らず
7 どこに行っても少数派
8 進路が逆に狭くなる
9 結婚しにくくなる

あとがき

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