新刊

クルマ本 解読100冊

ヒトとクルマ社会の過去・現在・未来が読み解ける!

100冊の本をずらり眺めると、なんとも人間の壮大な ドラマが目の前にせり出してくる気がする!!

著者 広田 民郎
ジャンル 実用・趣味
シリーズ 趣味・娯楽
出版年月日 2023/08/25
ISBN 9784341132835
判型・ページ数 A5・320ページ
定価 本体1,800円+税

まえがきにかえて

 クルマやバイク、それに自転車や飛行機を含め子供が好きな乗り物をテーマにした本を片っ端から読み漁って、振り返ると、ずいぶんな時間が経過した。
 27歳の時、たまたま自動車雑誌の編集記者として自動車やバイクの世界に没入したことがキッカケだ。ところが、クルマがどういうメカニズムで動いているかが皆目理解していない若者が、いきなりクルマの整備をテーマにした雑誌の担当になった。背伸びしてメンテナンスやメカニズムの記事を書き連ねるも、すぐに馬脚を現し頓珍漢な記事で常に編集長から書き直しを命じられるばかり。人並みに、給料泥棒と蔑まれなくなるには2年の歳月が必要だった。その2年間の読書は大部分クルマの整備書だった。

 そんなわけだから、クルマの読み物といえば、整備手順やメンテナス手順がすぐに頭に浮かぶ。エンジンオイルの交換なら、まずクルマを平たんなところに置いて、少しエンジンが冷えてからエンジンの下部に受け皿を置き、エンジンフードを開けて、オイル注入ロを開ける。つぎにクルマの下にもぐりドレンボルトを緩める・・・・・などと、まるで砂を嚙むような無味乾燥な箇条書きの文章をイメージしてしまう。
 だから、クルマが登場する手に汗握る物語やヒューマンタッチのエッセイが、この世の中に存在するなんて想像もできなかった。存在しているとしても、遠い星の出来事で、少なくとも当時の若者の視野に入っていなかった。
 記憶をたどると・・・・・初めてクルマが主人公の小説を手に取ったのは、1881年に発売されたSF作家の高斎正さんの『ホンダがレースに復帰するとき』(現在は徳間文庫)だった。個人的には自動車がどんな仕掛けで、走り、曲がり、止まる"のかを飲み込み始めたころ。それだけに、この小説は衝撃的だった。
 ふつうの読者が受けた衝撃とは少し様子が異なる。さきに挙げた砂を嚙むような整備やメンテナスのシーンがまるで魔法にかけられたように、するすると頭にそそぎこまれるような文章に仕立て直され、物語に溶け込んでいた。身体の中にあった活断層がいきなり動き出したような衝撃を受けた。「ああ、小説家という存在はすごいもんだな!」“言葉の魔術師"が行間に立っているような気がした。

 そこから、少しずつクルマの世界にもいくつかの人間ドラマが宿り、ときにはそれが詩になり、大河ドラマになり、瑞々しいエッセイが生み出される、といったことが理解できるようになった。
 クルマの企業をゼロから立ち上げた偉人伝、子供向けの絵本、自動車への果てない愛を描く物語、PCR検査を見つけたノーベル賞学者の日本車愛好物語なんていうのもある。IT長者が幼年期に憧れた目の玉が飛び出すほど高いクラシックカーで命を落とす物語、大メーカーの社長にドライビング・テクニックを伝授したベテラン車両実験のベテランの悲劇の死の物語・・・・・。
 この本で取り上げた100冊の本をずらり眺めると、なんとも人間の壮大なドラマが目の前にせり出してくる気がする。それだけではなく、この100冊をかみしめてみると、奇しくも自動寒100年の過去・現在そして未来を俯瞰できたのである。そもそも書籍というのは知の集約だからだ。この本の狙いはそんなところにもあるのだ。
 この地球上の人とクルマが織りなす数だけ、つまり数えきれないほどの物語がある。クルマの本の世界は、想像以上に豊饒の海なのだ。

 各文末に、独断と偏見をフル活用して一刀両断とばかりひと目でわかる評価を下しました。該当図書を手にするうえで、参考にしていただくとありがたい。
 俎上に載せた本の中には、新刊で容易に手に入るものが大半。が、なかにはAmazonなどのサィトから中古本としてしか手に入らないもの、あるいは図書館でしか読めない本もある。
 絶版となった本の中にも、高い評価を与えたくなる本やその存在を教えたくなる本もある。あまり人は意識していないが、テレビや映画作りをする際こうした絶版の本がベース(参考文書や資料)となっていることが珍しくないからだ(だから放送局には必ず図書室があります!)。いまは絶版の憂き目にあい、図書館の本でしか読めない本も、復刊される可能性もある。入手困難な本も、あえて取り上げた理由はこんなところにある。
 もうひとつ、老婆心ながら誤解なきようお伝えすると「グランプリ出版」の本がやや多いことに気づくかもしれません。何もこれは宣伝でもなんでもなく、自動車関連の書籍を多く出しているからにすぎません。

2023年8月

広田民郎



著者略歴

広田民郎

 三重県生まれ。取材を得意とするベテランの自動車ジャーナリスト。工業高校で化学を、大学は文学部というハイブリッド体質。1991年、サンデーメカニック向け整備専門月刊誌やバイク月刊誌の編集記者を経てフリーのジャーナリストに。「広田氏の記事には、たとえコラムひとつとっても落語でいうとフラめいたものがある。贅肉を落とした実用的な記事で十分なところ、彼の記事は常にいい意味でのオマケが随所に込められる」とはオートメカニックの元編集長・松苗哲哉氏の弁。「ハローハッピーこしがやエフエム」でラジオ放送『夕ミーの自動車のここが知りたい!』(毎週15分間)のMCを2019年から3年間担当。

 『解体ショップとことん利用術』(講談社)、『クルマの歴史を創った27人』(山海堂)、『クルマの改造〇とX』(山海堂)、『21世紀クルマのリサイクルのすべて』(リサイクル社)、『作業工具のすべて』(グランプリ出版社)、『物流で働く』(ぺりかん社)、『自動車整備士になるには』(ぺりかん社)、『ツウになる!トラックの教本』(秀和システム)、自伝的小説『クルマとバイク、そして僕』など著書は約80点 に及ぶ。

まえがきにかえて

ドキュメント

★森巧著『ならずもの/井上雅博伝-ヤフ—を作った男』(講談社)
★キャリ—・マリス著『マリス博士の奇想天外な人生』(ハヤカワ文庫NF)
★稲泉連著『豊田章男が愛したテストドライバ-』(小学館文庫)
★朝日新聞取材班『ゴ—ンシヨック 日産カルロス・ゴ—ン事件の真相』(幻冬舎)
★清武英利著『どんがら トヨタエンジニアの反骨』(講談社)
★鎌田慧著『自動車絶望工場』(講談社文庫)
★涌井清春著『クラシックカ—屋一代記』(金子浩久構成/集英社新書)
★井上久男著『日産VSゴ-ン』(文春新書)
★高杉良著『落日の轍—小説日産自動車』(文春新書)
★柳瀬博一著『国道16号線』(新潮文庫)
★橋本倫史著『ドライブイン探訪』(ちくま文庫)
★片山修著『豊田章男』(東洋経済新聞社)
★竹内一正著『未来を変える天才経営者イ—ロン・マスクの野望』(朝日新聞出版)

小説

★海老沢泰久著『帰郷』(文春文庫)
★沢村慎太朗著『自動車小説』(文踊社)
★アーサー・ヘイリー著『自動車』(新潮文庫/永井淳訳)
★デ-ビッド・ハルバースタム著『覇者の驕り』(新潮文庫/高橋伯夫訳)
★神林長平著『魂の駆動体』(ハヤカワ文庫)
★五木寛之著『雨の日には車をみがいて』(角川文庫)
★五木寛之著『メルセデスの伝説』(講談社)
★梶山季之著 産業スパイ小説『黒の試走車』(岩波現代文庫)
★吉村昭著『虹の翼』(文春文庫)
★藤代冥砂著『ドライブ』(宝島社)
★佐々木譲著『鉄騎兵、跳んだ』(文春文庫)
★サンテグジュペリ著『戦う操縦士』(光文社古典新訳文庫/鈴木雅生訳)
★絲山秋子著『スモールト—ク』(角川文庫)
★絲山秋子著『逃亡くそたわけ』(講談社文庫)
★佐々木譲著『疾駆する夢』(小学館文庫上下2巻)
★荻原浩著『あの日にドライプ』(光文社文庫)
★橋本紡著『空色ヒッチハイカ—』(新潮文庫)
★伊坂幸太郎著『ガソリン生活』(朝日文庫)
★矢作俊彦著『夏のエンジン』(文春文庫)
★ブロック・イェイッ著『エンツォ・フェラ—リ』(集英社文庫/桜井淑敏訳)
★梶山三郎著『トヨトミの逆襲 小説・巨大自動車企業』(小学館文庫)

エッセイ&評論

★ケン・パーディ著『自動車を愛しなさい』(晶文社/高斎正訳)
★中部博著『和風クルマ定食の疾走—日本的自動車づくりの発想』(JICC出版局)
★ポ—ル・フレ—ル著『いつもクルマがいた』(二玄社)
★梅原半二著『平凡の中の非凡』(佼成出版社)
★ポ—ル・フレ—ル著『新ハイスピ—ド・ドライビング』(二玄社/小林彰太郎、武田秀夫共訳)
★山川健一著『快楽のアルファロメオ』(中公文庫)
★三好俊秀著『テストドライバ—のないしょ話』(山海堂)
★ケイティ・アルヴォード著 『クルマよ、お世話になリました』(白水社/堀添由紀訳)
★佐野裕二著『自転車の文化史』(中公文庫)
★清水章一著『フェラーリさまには練馬ナンバ—がよく似合う』(講談社)
★堀田典裕著『自動車と建築—モ—タリゼ—ション時代の環境デザイン』(河出書房社)
★磐埼浩貞著『ドライブすればイギリスの素顔が見える』(亜紀書房)
★松本葉著『愛しのティ—ナ イタリア式自動車生活』(新潮文庫)
★杉田聡著『クルマを捨てて歩く!』(講談社ブラスアルファ新書)
★串田正明著『いつまでも自動車少年』(文芸社)
★浮谷東次郎著『俺様の宝石さ』(ちくま文庫)
★宇沢弘文著『自動車の社会的費用』(岩波新書)
★本田宗一郎著『私の手が語る』(講談社文庫)
★中嶋悟著『中嶋悟の交通危機管理術』(新潮社)
★柳家小三治著『バ・イ・ク』(講談社文庫)
★須賀敦子著『コルシア書店の仲間たち』(文春文庫)
★小沢コ—ジ著『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)
★大矢晶雄著『イタリア式クルマ生活術』(光人社)
★橋本愛喜著『トラックドライバ—にも言わせて』(新潮新書)
★中沖満著『力道山のロ-ルスロイス くるま職人思い出の記』(グランプリ出版)
★鈴木正文著『走れ!ヨコグルマ 自動車雑誌NAVI編集長のたわごと』(小学館文庫)

ヒストリ—

★NHK取材班編『フォ—ドの野望を砕いた軍産体制』(角川文庫)
★大下英治著『人間・本田宗一郎 夢を駆ける』(光文社文庫)
★GP企画センター編『日本自動車史年表』(グランプリ出版)
★サトウマコ卜著『横浜製フォ-ド、大阪製アメリカ車』(230クラブ刊)
★折口透著『自動車の世紀』(岩波新書)
★中村尚樹著『マツダの魂—不屈の男 松田恒次』(章思社文庫)
★前間孝則著『技術者たちの敗戦』(草思社文庫)
★橋本毅彦著『「ものづくリ」の科学史』(講談社学術文庫)
★桂木洋二著『歴史のなかの中島飛行機』(グランプリ出版)
★桂木洋二著『明日への全力疾走/浮谷東次郎物語』(グランプリ出版)
★前間孝則著『マン・マシンの昭和伝説』(講談社文庫/上下2巻)
★折口透著『ポルシェ博士とヒトラ- ハプスブル家の遺産』(グランプリ出版)
★へンリ—・フォ—ド自伝『藁のハンドル』(中公文庫/竹村健一訳)
★梯久美子著『散るぞ悲しき』(新潮文庫)
★折口透著『自動車はじめて物語』(立風書房)
★富樫ヨ-コ著『ポップ吉村の伝説』(講談社)
★豊田穣著『飛行機王・中島知久平』(講談社文庫)
★藤原辰史著『トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』(中央公論新社)
★都築卓司著『ベンツと大ハ車 日本人のアタマvs西洋人のアタマ』(講談社)
★斉藤俊彦著『くるまたちの社会史-人力車から自動車まで』(中公新書)

テクノロジ—、整備&開発

★伊東信著『イラスト完全版 イトシンのバイク整備テク』(講談社プラスアルファ文庫)
★前間孝則著『ホンダジェット 開発リ—ダ-が語る30年の全軌跡』(新潮文庫)
★中嶋靖著『レクサス/セルシオへの道程-最高を求めたクルマ人たち』(ダイヤモンド社)
★松本英雄著『力—機能障害は治る』(二玄社/NAVIブック)
★小関智弘著『鉄を削る 町工場の技術』(ちくま文庫)
★松本英雄著『通のツ—ル箱/ノ—ガキで極める工具道』(二玄社)
★鶴原吉郎著『EVと自動運転 クルマをどう変えるか』(岩波新書)
★山崎英志著『旧車のレストア ベンツC再生術』(グランブリ出版)
★林義正・山口宗久共著『林教授に訊く「クルマの肝」』(グランプリ出版)
★真田勇夫・絵、高島鎮夫・文『じどうしや博物館』(福音館書店)
★おとなのクルマ絵本『ビジュアル・ディクショナリ—・オブ・力—ズ』(同朋社)
★リチャ—ド・サットン著『ビジュアル博物館・自動車』(同朋舎出版)
★三本和彦著『「いいクルマ」の条件』(NHK出版)
★中岡哲郎著『自動車が走った 技術と日本人』(朝日選書)
★星野博美著『島へ免許を取りに行く』(集英社インタ—ナショナル)
★小林彰太郎著『小林彰太郎の世界』(二玄社)
★クレイグ・チ—タム著『図説世界の最悪クルマ大全』(原書房)
★下野康史著『図説 絶版自動車』(講談社プラスアルファ文庫)
★金子浩久著『10年、10万キロスト—リ—』(二玄社)
★力—ル・ベンツ著『自動車と私 カール・ベンツ自伝』(草思社文庫/藤川芳朗訳)

あとがき

SHOPPING ご注文

1,800円+税

ネット書店で購入

SHARE シェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加

おすすめ書籍

  • ネットで注文 書店さま