新刊

じつは裁判所ってこんな所なんです!

裁判所勤務20年 書記官の卒業日記

喝!残念!な方々が本日も在職しています。これまであまり語られたことのない裁判所の世界について存分にお楽しみください!

著者 中村 圭一
ジャンル ビジネス
シリーズ エッセイ・ライトエッセイ
出版年月日 2022/04/14
ISBN 9784341088095
判型・ページ数 4-6・224ページ
定価 本体1,300円+税

はじめに

 この本を手に取って頂きありがとうございます。

 はじめまして!現在は行政書士をしている著者の中村圭一です。
 私は、裁判所でちょうど20年間、主に「裁判所書記官」として勤務してきました。
 裁判所書記官についてみなさんはどういうイメージをお持ちでしようか?最近話題になった裁判官モノのドラマで裁判所書記官が登場していましたが、誰もが答えられるような認知度の高い職種ではないかもしれません。

 私が「裁判所書記官って何?」って尋ねられた際には、「テレビのニュースで裁判のシーンが映るときに、裁判官が座っている一段下に黒い法服を着て座っているのが書記官ですよ」と説明したり、「医者と看護師の関係の看護師のような存在で、裁判官と一緒に裁判を進めていく仕事ですよ」などと説明したりしていました。
 それでも、一度説明した後にも関わらず、「何か書いてる人でしょ」と漠然と言われたり、「裁判官書記官」とか「裁判官」と違う呼び名で呼ばれたりすることも多く、裁判所書記官の説明をしているとまあまあ悲しくなることも多いです(笑)。

 裁判所の公式の説明では、「裁判所書記官は、法律の専門家として固有の権限が付与されており、その権限に基づき、法廷立会、調書作成、訴訟上の事項に関する証明・・・などを行います」となっています。
 また、「法令や判例を調査したり、裁判が円滑に進行するように、コートマネージャーとして弁護士、検察官、訴訟当事者と打合せを行うのも大きな役割です。裁判所書記官が 立ち会わないと法廷を開くことができないので、裁判所書記官はどの裁判所にも配置されています」とも説明されています。この点については、通常、公的機関が証明書を出す時などは、例えば住民票の証明は、個々の担当者ではなく市町村長の名前で行っていますが、 裁判所書記官が行う証明は、その裁判所書記官名で証明をすることができる点は、割とすごいことかなと思います。

 そして、裁判官が作成した判決の草稿を、言い渡す前にチェックする仕事も担っています。裁判官がミスなんてしないだろうとお思いかもしれませんが、裁判官も普通の人間です。逆に、作成した判決に誤字脱字等のミスが全くないような例の方が少ないです。そのような判決を、誤字脱字といった形式面のみならず、法的な観点から内容面についてチェックするのも書記官の重要な仕事になります。

 さらに、裁判官が常時配置されていない裁判所はあっても(その場合、裁判官が月に1回だけなどの頻度で別の裁判所から仕事をしに行くことになります)、裁判所書記官が配置されていない裁判所がないのも意外と驚きではないでしょうか?

 裁判所書記官の仕事.役割は、以前は、その名前のとおり、調書を作成したりする「書記」の部分や、証明を行う「公証」の部分に力が置かれていましたが、現在では、むしろ、裁判事務についてマネジメントを行う「コート(法廷)マネージャー」としての役割の方が重要になってきています。
 また、先ほど「医者と看護師の関係の看護師のような存在」と書きましたが、「看護師プラス病院の事務職を兼ねているようなイメージ」と言った方が正確かもしれません。

 いずれにせよ、裁判官は主に裁判の事件記録を読んだり裁判の進行をしたり判決を書いたりすることに集中するのですが、それ以外の裁判所での事件の進行をほとんど行っているのが裁判所書記官であり、裁判所でかなり重要なポジションを担っていることは確かです。

裁判所では、次のような貴重な経験をすることができました。

  • 最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所(支部)、家庭裁判所(支部)、簡易裁判所の全ての審級で勤務しました。
  • 民事・刑事・家事・事務局などかなり幅広く担当させて頂き、不動産競売と少年事件以外はほぼ全て担当しました。
  • 管理職としての最後の7年間で、高裁所在地の本庁で民事・刑事・家事の各主任書記官を経験、さらに課長補佐も経験しました(この4つを全てしかも管理職として最初の7 年で経験した人は裁判所史上初だと思います)。
  • 誰もが知っている有名な裁判を担当したり、海外出張に行ったりと通常では体験できないレアな経験をたくさんすることができました。

 このように、私は、20年間の裁判所生活で、非常に多様かつ貴重な経験をすることができたのですが、実は、裁判所の実情をよく知る裁判所書記官が、裁判所についてありのまま語ったような本がこれまでほとんどありません。 裁判所在籍中に出版することはまず無理でしょうし、定年退職よりも前に私ほど裁判所で多様な経験をすることができた人も少ないと思います。そうすると、これまで語られることのなかった、ある意味ベールに包まれた裁判所について私がお話しすることは、私の使命なのでないかとも感じるようにもなりました。

 この本では、私の裁判所生活で見聞きしたことの中で読者の皆さんに特に興味を持って頂けそうなこと、私の印象に残ったことを中心に、良くも悪くも、とにかく正直にありのままに書きました。
 裁判所関係の方のほかに多くの方にはかなり興味を持って頂ける本だと思います。裁判所の内部にいても自分が知らない裁判所の部分を知ることができますし、知っていることであれば共感したり、今後の裁判所生活で活かしたりして頂ける部分も多いと思います。

 さらには、裁判所事務官試験の受験生の方々、法科大学院生、司法試験受験生、司法修修生、裁判所と関わる仕事をされている方、裁判員を経験された方など、裁判所に関わっている方だけではなく、裁判所と同様の公務員の方にも興味を持って読んで頂けると思います。
 また、裁判所事務官試験の受験を考えられている方々や裁判所事務官に採用された方々が、裁判所のありのままの実情等について知ることができる本がなく、自分自身が事前に実情を全く把握できなかったことも、この本を書きたいと思ったきっかけになっています。

 じつは、この本を一番読んで頂きたいのは、裁判所に全く関係のない方々です。ある意味でベールに包まれた、身近な存在とはいえない裁判所についてわかりやすく書きました。 裁判所のありのままを知っていただき、今後は裁判所に大いに興味を持って頂ければ幸いです。
 そのため、裁判所関係者の方々にとっては、一部正確ではないと感じる表現や用語もあるかもしれませんがご了承いただければ幸いです。
 それでは、これまであまり語られたことのない裁判所の世界について存分にお楽しみください!

2022年3月

                                       中村圭一

著者略歴

中村圭一(なかむらけいいち)

昭和49年生まれ。
福岡市出身。福岡県立筑紫丘高校卒業。同志社大学商学部卒業。
現在、行政書士(特定行政書士・申請取次行政書士)。
20年間の裁判所勤務中は、最高裁判所、福岡高等裁判所、福岡地方裁判所、福岡家庭裁判所、佐賀地方裁判所などに勤務。主任書記官、課長補佐、裁判所書記官、係長、調査員、裁判所事務官などを歴任。 趣味は、野球観戦(埼玉西武ライオンズファン歴約40 年)、食べ歩き(グルメ中心のSNSのフォロワ合計1.5万人以上(令和4年3月現在)、旅行(大学在学中は、観光論の「玉村和彦ゼミに所属)、バレーボール、お酒(日本酒の学校「神田和泉屋」出身)、読書、将棋(アマ3段)など多彩。

【中村圭一行政書士事務所】(福岡県大野城市)
https://k1k1k1.net 中村圭一 行政書士

はじめに

第1章 「裁判所のありのまま」お伝えします
裁判所での事件!こんな感じです!

過払金事件の急増が私を直撃しました!
裁判所史上かなり画期的な裁判員裁判がスタ—卜しました!
じつは、 高等裁判所の書記官って、優秀な人材が集まります
とにかく繁忙でした!激増する成年後見事件!
後見人による不正の横行に右往左往しました!
マスコミにも注目された著名事件を担当しました!
今一番ホットなのは「民事裁判のIT化」ですが・・・
裁判所を訪れる様々な人たち
裁判の傍聴についてお教えします!
コラム❶

第2章 「裁判所のありのまま」お伝えします
裁判所でのビックリ ?!

?! 裁判所職員も不祥事を起こす
?! 残念な職員はいる(1)
?! 残念な職員はいる(2)
?! 残念な裁判官はいる
?! 居眠りをする職員はいる
?! 職員が交通事故を起こしたらどうなる
?! 裁判所職員の子供はやっぱり裁判所を目指す
?! ひどいこと!もある前任者からの引継ぎ
?! 意外と多いメンバ-の大幅な交替
?! 不毛な業務はあるの
?! 積極的な女性登用が行われていますが・・・
?! ハラスメントはある
?! 裁判所の人事は今後どぅなっていく
コラム❷

第3章 「裁判所のありのまま」お伝えします
へぇ!! ちょっと意外?な話

実は個性あふれる!裁判官
意外と大変な裁判所の当直
一般の方も「調停委員」として活躍しています!
裁判所にも「労働組合」ってあるの?
裁判所職員の昇進事情って!?
異動する時どう伝えられるの?
小規模支部での経験が意外と大きい!?
学歴によって扱いは違ってくるの?
新庁舎への移転に当たればラッキ—!?
新型コ□ナウイルスへの対応は?
コラム❸

第4章 「みんなが知りたい」裁判所の話
待遇はどうなっている?

どうやったら書記官になれるの?
裁判所職員の給料ってどのくらい?
通勤手当はどうなってるの?
住宅事情はどうなってるの?
新採用職員ってどんな感じ?
書記官ってどう異動するの?
裁判所職員の日常って?
育休の制度はどうなってるの?
どうやったら管理職になれるの?
コラム❹

第5章 「みんなが知りたい」裁判所の話
組織はどうなっている?

裁判所にはどんな職種があるの?
超過勤務の実情は?
一般の会社と同じような部署「事務局」もあります!
裁判所における「仕事の効率化」
裁判所では年間目標を掲げていますが・・・
人材育成はどう行われているの?
人事評価はどう行われているの?
裁判所の人たちって真面目?
裁判所勤務に向いているのはどんな人?
コラム❺

第6章 「20年間お世話になった」裁判所
私、退職しました!

退職すると聞いてからの周囲のリアクションは?
私が裁判所を退職した理由
ネット上で囁かれている退職理由
在職中と退職後の気持ちの違いは?
私の今後の活動や目標について
コラム❻

あとがき

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